恋人のフリはもう嫌です

「西山さんが到着したら、連絡してと」

 このひと言で、全てを把握した。
 健太郎は俺をからかっただけで、ここには来ていないのだ。

「必要ない」

 彼女に覆い被さるようにして、彼女の膝裏に手を当て、彼女をその場に座らせる。
 靴を脱ぐのさえ惜しい、自分の余裕の無さに嘲笑を漏らした。

「西山さん?」

 押し倒してしまいたい衝動を抑えながら、彼女の唇に触れる。

「大人の余裕が台無しだ」

 ぼやいてキスをすると、彼女の指先が唇と唇の間に入って邪魔をする。

「なに?」

 その手を取り、指先にキスをすると文句を言われた。

「健太郎さんが心配するので、連絡を入れてください」
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