恋人のフリはもう嫌です

「この体勢、恥ずかしいです」

「ベッドの軋む音は響くから。千穂ちゃんがここに居づらくなるのは、忍びない」

 理由に息を飲むと、彼の手が私を捕まえて体を捩る。

「透哉、さん」

「ん?」

 いつにも増して甘い声を出す彼に恥ずかしくなって、小さな声でお願いを口にする。

「二人の時は、そう呼んでもいいですか」

「まいったな」

 唇を重ねられ、絡め取られると甘い痺れが走り、彼の体にしがみつく。
 悩ましい眼差しと目があって、彼はぼやいた。

「かわいい発言されると、手加減してあげられない」

 ドクンと心臓が慌ただしく音を立てるのに、私の口は今日も強がりたいみたいで。

「手加減しないでください」

 真っ直ぐに向けられる眼差しに、吸い込まれるように目を閉じ、彼の唇を受け入れる。
 キスだけで溶けてしまいそうな中で、彼の指先は私の体に触れ悪戯に刺激した。

「やっ。待って」

「待てない」

 自分の声とは思えない甘い嬌声が漏れ、彼の体にかかるシーツに噛み付く。

「我慢しないで。声聞きたい」

 彼の腕の中で翻弄され、彼に深く溺れていった。
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