恋人のフリはもう嫌です
松本機器に着き、現れた人物に目を丸くする。
松本社長がパソコンのわかる若い社員を同席させると話されてはいたけれど、まさかあの日の松本さんだとは思わなかった。
社長の息子さんなのだから、当たり前と言えば当たり前かもしれないけれど。
松本社長の手前、初めましてのフリをして名刺交換をする。
肩書きは営業部長だ。
まずはキタガワで使用するために開発した、社内勤怠システムの説明。
詳細の説明ではなく、どのような部分のシステム開発が必要だったかの概要を話した。
松本機器から購入した機器本体だけにも簡易的な機能は備わっていて、キタガワで使う上で追加した点を説明した。
「簡単な勤怠の管理だけでしたら、購入した機器本体のみで使用可能でした。その点もキタガワで販売させていただける際は、記載しようと思っています」
「そこを含めて、低価格が売りの機器ですので」
自社の取り扱い商品の利点を言われ、松本社長も松本さんも嬉しそうにしている。