恋人のフリはもう嫌です

「恥ずかしながら、私は機械に疎くて。西山や、それに松本営業部長も機械にお詳しいそうですので、簡素な説明書きでなんなく理解できると思います」

「ええ。そうですね。ですから、この説明書で過不足はないとばかり」

 松本さんは元々、機器と一緒に入っていた薄い紙切れを手にして言った。

 中国語で書かれたものを直訳した、少しおかしな日本語の説明書。

「どのような機能があり、どう接続すれば使えるのか。私が実際に西山にレクチャーしてもらい、わからなかった点、説明がほしい点を踏まえ、お渡しした説明書は作りました」

 松本社長は顎に手を当て、唸るように言った。

「なるほど。私は機械がてんでダメでしたね。パソコンの電源も入れられない。でもこれを見れば、普段からパソコンを使う若い人でしたら、使えると」

「はい。できれば他の機器も説明書きを見直していただき、より詳しいものの同梱をお勧めします」

 松本さんは資料を見ながら、神妙な面持ちで「考えてみます」と言った。
 彼からは手応えがあったのかどうか、微妙なところだ。
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