恋人のフリはもう嫌です

「西山さん抜きで会いたい。ダメかな」

 私が目を丸くするのと、受話器を吉岡さんに奪われるのとほとんど同時だった。

「お電話かわりました。吉岡と申します。藤井ではわかり兼ねます。西山にお繋ぎしますので、お待ち下さい」

 吉岡さんは、松本さんの返事を待たずに保留を押した。
 情報システム課に電話を転送し、電話口に西山さんを呼び出してもらっている。

 内線で話す西山さんの声は小さいのか、私には聞こえてこない。

「総務の吉岡です。松本機器様より藤井にお電話がありましたが、様子がおかしかったので西山さん対応をお願いします」

 電話を終えた吉高さんは、眉尻を下げて私に言う。

「そんな顔しないの。失礼なのは向こうだから。大丈夫よ。西山さんが、なんとかしてくれるって」
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