恋人のフリはもう嫌です

西山透哉side

 隣で眠る彼女の髪を撫でる。

 自分たちの周りで『結婚』の二文字が頻繁に話題に上り、彼女との年齢差を痛感した。

 そしてここにきて、彼女と年齢の近い松本さんからの連絡。
 彼女の髪を撫でていた手をギュッと握りしめ、彼女を起こさぬように静かにベッドから離れた。

 隣の部屋に移動すると、電話をかける。

「夜分遅くにすみません」

「いえ。起きていましたので、気になさらないでください」

 相手は松本さん。

 総務課の千穂ちゃんに直接電話をした彼の暴挙が、巡り巡って俺のところまで回ってきた。

 その時は、軽くいなして電話を切るつもりだった。

「彼女にお相手がいるのは、存じ上げています」
 総務課から電話をかわった第一声は、想像していた言葉とはかけ離れていた。

 けれど確かに、松本社長と話している時に「この二人、どう見ても恋仲だろう」と言ったのは松本さんだ。
 その上、「失礼な話をするなよ」とまで言ったのも彼だ。
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