恋人のフリはもう嫌です
「では、どういったご用件でしょうか」
身構えて聞くと、彼は迷いなく言った。
「ほかの別の誰か。ではなく、彼女本人の答えが聞きたいです。二人で話をさせてください」
「ふざけるな。彼女は俺のものだ」
荒げたい声を抑え飲み込むと、かろうじて別の言葉を発した。
「わかりました。明日の午前中。一緒に朝食を取れるように手配します」
奇しくも明日は休日だ。
この提案は、最大限に譲歩したつもりだ。
「では! 彼女の」
弾んだ声を苦虫を潰した気持ちで聞き、努めて淡々と告げる。
「彼女にもそう伝えますが、もしも彼女が現れない時は、それが彼女の答えだと思ってください」
しばらくの沈黙が流れたあと、松本さんは短く応えた。
「わかりました。西山さんを信じます」