恋人のフリはもう嫌です

「それじゃ月曜日にね」

 爽やかな笑顔を向けられ、私はぎこちなく会釈をして西山さんと別れた。

 よろよろと吉岡さんの元に逃げ帰る。

 ニマニマした吉岡さんに「なあに? すっごく仲良さそうだったじゃない」と突っ込まれ、どう返したらいいのか言い淀んだ。

 だいたい理由が鼻持ちならない。

 どうせ、私を選んだ理由は『俺に惚れる心配がないから』だろう。

 言い寄ってくる面倒な女性避けに、ちょうどいい。
 きっと、そんな考えだ。

 どうして私はあそこで『受けて立つ!』という、好戦的な態度を取ってしまったのだろう。
 後悔先に立たずとは、このことだ。

 残念でした。
 私の好きな人は西山さんですよーだ。

 心の中で舌を出して、憎まれ口をたたく。

「モテ男なんて、自爆してしまえ!」

 物騒な文句に、吉岡さんはカラカラと笑う。

「これは西山さんに、随分とからかわれたね」

「そうなんですよ〜。吉岡さ〜ん」

 私は吉岡さんに泣きついて、吉岡さんがどれほど私の理想の人なのかを熱く語った。
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