恋人のフリはもう嫌です
結婚式のそのあとは
結婚式のそのあとに
「おめでとう」
「おめでとう」
周りから祝福され、幸せいっぱいの顔で笑う。
まばゆい光に包まれて、穏やかに微笑んでいる2人。
「藤井ちゃん、ものすごく幸せそうね。森主任」
「はい。新婦の彩芽さんも、とても幸せそうですね。いいなあ。憧れます」
今日は健太郎さんの結婚式で、吉岡さんと一緒に参列して、フラワーシャワーの中で微笑む新郎新婦を見つめていた。
「なに言ってるの。お相手、いるでしょう?」
吉岡さんに肘で押され、曖昧に笑う。
視線の端に、離れた場所にいる透哉さんを映す。
いつもより華やかなスーツに身を包む彼は目に毒で、まともに直視できない。
松本さんの話は、あの日に有耶無耶になったまましていない。
表面上は今まで通りのお付き合いが続いていて、本当に聞きたかった核心部分には触れないまま。
「松本さんに私を会わせた真意は、なんだったんですか?」
その程度の質問をして揺らぐような間柄なら、いつかダメになるとわかっているのに、その勇気が出ない。