恋人のフリはもう嫌です

「入り口ゲートにあるような設備を入れられるくらい思い切った方が、社員のモチベーションも効率も上がりますよ」

「あれはすごいですね」

 感心したように西山さんが言うものだから、荒井課長も話に乗ってくる。

「そうでしょう。あれは我が社の一推しです。システムもばっちりフォローしますので」

 システムは自社で賄いたいと健太郎さんからも要望が入っているはずだけれど、セット売りがしたいのか、システム込みで勧められる。

「我が社でシステムまで依頼していただければ、無駄がありません。是非ともシステムもご検討いただければ」

 そこは絶対に、西山さんが負けるわけない。
 そう言いたい気持ちをグッと堪える。

「キタガワ製作所はインターネットシステムの環境を整え、業務拡大してきた会社です。そこを社外に依頼していては、キタガワの名が廃るというものです」

「いやはや。そうですな」

 やんわりとした断りの文言に、荒井課長は頭をかいた。
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