恋人のフリはもう嫌です

「それは、本当のことなので」

「ハハ。俺、高い評価をもらえているみたいだね」

「それはだって、我が社のエースですよ?」

「俺の前職、知っている?」

「え?」

 突然の問いかけに、面食らう。
 彼は表情を和らげて続けた。

「ブラウニー国際情報サービスってところでさ。そのブラウニーの意味が好きだったな」

 有名なIT企業『ブラウニー国際情報サービス』に勤めていらっしゃったと、噂では聞いていた。
 その社名の『ブラウニー』の意味までは、知らないけれど。

「どういう、意味なんですか?」

「北欧の方の妖精さ」

「妖精」

 想像していなかった答えに、彼の言葉を復唱した。
 彼は理由を教えてくれた。

「ブラウニーは、住みついた家の家事なんかをこっそりと手伝ういい妖精でね。俺たちの仕事は妖精さんの仕事ってわけさ」

 仕事をする上で便利になるシステムを構築する西山さんは、妖精であるブラウニーのような役割と言いたいのかな。
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