恋人のフリはもう嫌です
「女性にしつこく迫られていてね」
なんの報告でしょうか。
私を落ち込ませたいのかな。
モテる自慢は別でやってほしい。
期待していた分、怪訝な表情がすぐ顔に出てしまったようで、彼は乾いた笑いをこぼした。
「怖い顔しないでよ。冗談抜きで困っているんだから」
「だってモテない私に相談する内容にしては、自慢を通り越して嫌味です」
私の訴えに、彼は目を丸くした。
「モテない、の? 千穂ちゃんが?」
「ええ。他に誰が?」
つい刺を纏う返答に、彼は苦笑いをする。
「いや、うん。ごめん。知らなくて。でも、こちらがなんとも思っていない人に、好意を持たれても困るでしょう?」
「それは、そうですね」
その点については、力強く同意したい。
吉岡さんと飲みながら、熱く語った内容とほぼ同じだ。
女性関係が派手だと聞いていた彼にも、同じような考えがあるとは思わなかった。