恋人のフリはもう嫌です

「恋人らしく、というのは」

 前にも似たような理由でキスをした。
 あれ以来、キスはしていない。

「こうして家に遊びに来るだとか」

「それは、はい。西山さんがよろしければ」

「なんなら泊まってくれて構わない」

「とまっ。泊まりですか?」

 声が上擦りそうになり、んんっと咳払いをする。

「なにか、問題でも?」

 楽しそうに質問する彼に、からかわれていると気づく。
 だから背筋を伸ばし、至って真面目な顔で返答した。

「いえ。光栄です」

「面白いよね。千穂ちゃんって」

 顔を崩して笑う彼が、私の手に自身の手を重ねた。
 体を揺らすと「小動物みたいでかわいい」と、顔を緩ませた彼に言われた。
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