恋人のフリはもう嫌です
離れたくなかった。
けれど、僅かでもそんな本音をこぼしたら、全てをぶつけてしまいそうで言えなかった。
思わず持ち帰ってしまったピアス。
見るのも嫌なのに、彼の部屋に置いておくのも嫌だった。
もしも今もなお、関係が続いているのなら。
彼女が指輪通り、結婚しているのなら。
彼は不倫している、の?
だから、私はその隠れ蓑?
そこまで考えて思いっきり、かぶりを振った。
彼はそんな人じゃない。
社会人としての立場も弁える人だった。
恋人役だとしても、私を守ると言ってくれた。
自分の知っている彼を信じよう。
そう強く思って、ピアスは鞄の奥底に押し込んだ。