エリート上司を煽ったら極情愛を教え込まれました

「お呼びでしょうか」

「とりあえず座りなさい」

言われるがまま、座ると口を開いたのは鴨居社長だった。

「今日は急にお呼び立てして申し訳ないね。忙しくこうやって話す機会がなかなかなくてね。実は今日はお願いに上がったんだよ」

「はい」

ちらりと明久さんを見るとあの太々しさはなく、したたかと言うか何を考えているのかわからない表情だった。

すると父である社長が私を見た。

それがなんだかいつもと雰囲気が違うと言うか……嫌な予感しかしない。

「明久君から聞いたが、結婚しても仕事を続けると言うのは本当か?」

「え?」

「悪く取らないでくれ」と前置きをし鴨居社長が話を続ける。

「君はうちの息子と結婚する。ということは君は谷崎ではなく鴨居家の人間になる。実家を手伝うのとは訳が違うんだ。君には結婚するまでに鴨居家のしきたりにも慣れてもらわなきゃいけないし、息子を立ててもらわないと嫁に来る意味がない」

信じられない。

自分の私利私欲のために親を使ってまで自分の思い通りにしようとしているの?

だけど今の私には言い返せる言葉が見つからない。

それなのに……。

「本当に申し訳ない。私が自由に育てすぎてわがままに育ってしまったんです」

なぜ父が謝らなきゃいけないの?

「そこで、まだ結婚式までは時間があるが、鴨居家に慣れるために私たちの家に来ないか?」
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