エリート上司を煽ったら極情愛を教え込まれました
「え?そ、それは」

どうしてそうなるの?

明久さんに視線を移すと、下を向いて恐縮している。

「泉、仕事の方はしばらく休め」

「え?それは……」

イベントの準備で忙しいし、絶対に成功したい。今離れるなんてできない。

それなのにこんなやり方は卑怯じゃない。

「泉さん?」

鴨居社長を前にしたら反論できない。

私が黙っていることを了承したと認識した父は鴨居社長に頭を下げた。

「それじゃあ、明日迎えに伺いますので」

満面の笑みを浮かべた明久さんを心底憎んだ。



二人をお見送りした。社長室には父と私の二人になった。

「なんであんなこと言うんですか?そもそも企業としてはうちのほうが断然上じゃないですか!なんでここまで私たちがへこへこしなきゃいけないんですか?」

悔しくて唇を噛む私に父は座れと肩をたたいた。

父は大きなため息をつくとソファの背にもたれかかった。

「お前は小さかったから知らないと思うがウォルカがまだ「下着の谷崎」と言う名前だったころ、一度倒産の危機があったんだ。それを救ってくれたのが今の鴨居の先代。現在の会長だった」

「それって鴨居に借りがあるってこと?」

父は小さく頷いた。

「本当はお前との縁談を避けたかったんだが先方からしつこくて……」

こんなことを聞いたら反論できないじゃない。

私は力なく肩を落とした。

「わかったけど……今度のイベントはどうしても成功したいの。せめてそれが終わってからじゃダメなの?」

だが父は首を縦に振ってはくれなかった。
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