エリート上司を煽ったら極情愛を教え込まれました
「どんな理由があろうとお前は鴨居の人間になる。普通に考えてもうちの会社にいるのは違う。それにお前がいなくとも会社は回るんだ。お前がどれだけ頑張ってきたかはわかっている。だがな……」

「わかりました。その代わり一つだけお願いがあります」

「なんだ?」

「私が会社を辞めることはを上司に伝えるのは明日にしてほしいんです」

父は理由を聞かず「わかった」とだけ言うと、会合があるらしく私を残し席を立った。

私はしばらくその場から離れられなくなった。



その日の夜。誰もいない販売統括部で私はデスクの中の私物を片付けていた。

思った以上の荷物にここでの生活の長さを実感した。

こずえ、怒るだろうな〜。

こずえの顔が手に取るように想像できてしまう。

そして洋介さん。

私は洋介さんの椅子に腰掛けた。

この席から私の席はちょうど斜め。

結構よく見える場所にあるんだ。

そういえばここでは言い合いばかりしてたっけ。

いつも私が一人カリカリして洋介さんは余裕たっぷりにでんと構えてて。

それがまた憎らしくもあった。

でも今思うとどうでもいい人なら気にもならない。やっぱり私は洋介さんをずっと意識してたんだろうな。

だけどそれが好きに繋がってることに無自覚だった。

そしてこんな別れが待っていようとは思いもしなかった

でも面と向かってお礼なんて……できる訳ないじゃない。

そう思ったら唇が震え、カーッと熱くなって涙が落ちてきた。

それが合図のように涙がとめどもなくこぼれ落ちる。

洋介さんの机の上に涙がポタポタ落ちる。

「ごめんなさい」

こんな言葉しか出てこない。

私は、彼の机に別れを告げた。

その時だった。
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