エリート上司を煽ったら極情愛を教え込まれました
私は自分の耳を疑った。

「え?どういうことですか?」

だって私には好きな人がいるって……。

もしかして洋介さんが一社員だから?

「嫌です」

私があんなに苦しんだのにお父さんはわかってくれないの?

「それは無理だ。先方も大変乗り気で是非にということだ」

「信じられない。……それにお父さんだって知ってるでしょ?私と明久さんのことで変な噂が立ってるっていうのにどんなもの好きよ」

「ははは、それを承知でお前をぜひ嫁に欲しいと言ってきたんだ」

いや、そこ笑うとこじゃないでしょ。と言いたい気持ちをぐっと堪える。

すると父が真っ直ぐ私を見る。

この真剣そうな目が嘘偽りないことは娘の私には痛いほどわかる。

だけどいくら父のためでもできることとできないことがある。

私はもう迷わないって決めたんだから。でもとりあえずどんなもの好きか聞くだけ聞いてみる。

「一体誰なんですか?」

「Tコーポレーションを知っているか?」

「はい」

Tコーポレーションは大手アパレル企業。私が知っているだけでも女性向け4ブランドを展開している。

「そのTコーポレーションの社長のご子息だ」

出た、御曹司。

明久さんのことで私は御曹司って言葉が大嫌いになった。
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