エリート上司を煽ったら極情愛を教え込まれました
「おい、どうした?」

「え?」

「ため息。俺、なんかした?」

私は首を横に振った。

「ごめんなさい。ちょっとあの人のことを思い出して」

すると洋介さんが再び私の手をギュッと握った。

「俺の前で他の男を思い出すなんて……悪い子だ」

「そんな意味はないんだけど」

どちらかというと洋介さんといる方が楽しいという意味でだったんだけど……。

「俺といるときは俺だけを見ていろよ」

「う、うん」

どうしよう。

突然の溺愛モードに嫌いなはずの洋介さんにときめいてしまっていた。



映画館に着くと私はあらかじめ用意していた封筒を洋介さんに差し出した。

「なにこれ」

「費用は私が持ちます。これを使ってください」

かかった費用は私が払うと決めた。

だけど私が率先してお金を払うのは見栄え的にどうかと思ったからだ。

実際さっきのタクシー代だって洋介さんが立て替えていた。

これはルール違反になる。

洋介さんはしばらく封筒を見つめていたが「わかった」と言ってそれをスーツのポケットにしまった。

「で?どの映画が観たいの?」

「え?」

「だって映画が観たいからここにきたんだろ?さ〜どの映画を観る?」

正直なにも考えていなかった。

ただ、デートといえば映画が定番だと思ったからだ。

私は洋介さんといるときは明久さんとは行かない様な場所に行きたかった。

だけどどの映画を観るかまでは考えていなかった。
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