エリート上司を煽ったら極情愛を教え込まれました
でも確かに私たちを見ている人は誰もいない。

私は恐る恐る洋介さんの口にポップコーンを放り込む。

「本当だ美味しい。もう一個頂戴」

「は、はい」

もう一度ポップコーンを口に放り込もうとすると洋介さんがその手を持った。

「え?」

「玉入れじゃないんだから放り込まない」

そう言って私の手に持っているポップコーンをパクッと食べたのだが、わざとなのか偶然なのか指まで食べられた。

驚いている私を見ながら洋介さんは満足そうに「うん、美味しい」と言って前を向いた。

私はただただドキドキするばかり。

すると照明が落とされ映画予告が流れ始めた。

だが私はまもなく始まろうとする映画がどれだけ怖いのか不安でならなかった。

映画は人々が次々とゾンビになってしまい、主人公とその恋人が逃げまくるというありがちな映画なのだが、案の定恋人までもがゾンビになってしまうのだ。

何度もヒヤヒヤする場面や急にゾンビのアップが映し出され、おまけにソンビ同士の戦いがグロすぎてもう、怖くて怖くて何度も悲鳴をあげそうになる。

本当は彼の腕にしがみついて「怖い」ってやってみたいのだが、正直そんな余裕など全くなく、早く終わってと願いながら下を向くのが精一杯だった。

その時だった。

「怖いの好きだったんじゃないの?」
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