エリート上司を煽ったら極情愛を教え込まれました
「何かいいことでもあったんですか?」

「え?」

我に返る。

「笑ってたから」

洋介さんとのことを思い出していたなんて絶対に言えない。

「このお肉が美味しくって」

でも本音は違った。

どんな高価な料理も楽しくなきゃ美味しくない。

金曜日の夜に食べたお好み焼きは久しぶりに美味しいと思えた。



その後にピアノのコンサートに行ったが、シューベルトの暗い感じの曲ばかり。

正直、怖くても楽しめる映画の方が断然よかった。

ただ前を向いて静かにピアノを聴いている私たち。

しがみつくこともなければポップコーンも食べない。

今までの私はなんだったんだろうと思わずにはいられなかった。

おそらく明久さんも例の彼女とはクラシックコンサートに行くこともないだろう。

私本当にこの人と結婚しなきゃいけないのだろうか……。

自分の未来が暗く、シューベルトの曲が今の私の気持ちを表している様だった。
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