エリート上司を煽ったら極情愛を教え込まれました
なんとか心を落ち着かせようとコップに手を掛けるが震えて持てない。

「本当?嬉しい〜」

「もし子供がいなくたって、真子のことは俺がちゃんとみてあげるから」

思い描いていた理想の家庭が崩れ落ちていくのがわかった。

「お待たせしました」

人生最大の悪夢を見ている中、甘い匂いを漂わせたパンケーキと香ばしい香りのコーヒーが運ばれてきた。

とても食べる気にはなれない。

こんな気持ちで結婚なんてできない。

できることなら目の前のパンケーキと明久さんごと彼女に託し、この場から立ち去って結婚もなかったことにしたい。

でも今ならまだ間に合う?

浮気の現場を押さえたんだから明久さんだって私の申し出を断るはずがない。

そう思ったのだが……。

「だけど俺が会社を背負う以上、何かを犠牲にしなきゃいけないんだ」

「セレブの宿命ってこと?」

「そんなとこかな?」

その会話を聞いたら今までの勢いが萎んでしまった。

家のため、ウォルカのために……。

政略結婚ゆえ私に拒否権はなかったのだ。

だけど彼に本命がいるということは、結婚したらもれなく明久さんの愛人もついてくるってこと?

じゃあ子供ができたら?

頭に浮かぶのはメロドラマ。

主人公の私には夫はいて、夫には結婚前からの愛人がいて……その中で繰り広げられる愛憎劇?
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