エリート上司を煽ったら極情愛を教え込まれました
「まだよくわからないの。結婚しなきゃいけないことはわかってるし結婚を白紙にするつもりはないの。だけどどうしても彼の……洋介さんの顔がちらついてしまうの」

律ちゃんは私の話を否定したりせず黙って聞いてくれた。

「ねえ泉ちゃん、とりあえずドレス選びはやめようよ」

「え？」

「お義母さんには私が適当に言っておくよ」

「律ちゃん」

「私はいつでも泉ちゃんの味方だよ。だから泉ちゃんが幸せになることが私の願いなの。例の鴨居さんのことは許せないし、私だってそんな人のところに泉ちゃんを嫁がせたくな。だけど泉ちゃんの置かれている立場を考えると下手に結婚をやめたらとは軽々しく言えない」

律ちゃんが私と同じ境遇にいたからの言葉は深かった。

「ありがとう。ずっとモヤモヤしてたから話せて気持ちが少し楽になったよ」

「私ならいつでも相談に乗るよ。でももし本気でこの話を白紙にする気があるのなら教えて」


律ちゃんが帰って一人になった私は律ちゃんの言った言葉が頭から離れなかった。


『泉ちゃん、もしかしてその洋介さんって人のこと本気で好きになったんじゃないの？』

もしかしてと思うことは何度もあった。

会えば会うだけ疑問は増していた。

だけど自分の心にブレーキをかけて「これは単なる契約だから」と言い聞かせていた。

それなのに洋介さんとの距離が近くなるにつれごまかしが効かなくなるような気がして怖かった。

だってこのままだと本当に取り返しがつかなくなるだもん。

私は一体どうなるの？どうしたいの？

頭が混乱して自分が向かっている場所すら分からなくなっていた。

< 77 / 175 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop