エリート上司を煽ったら極情愛を教え込まれました
それでも気になってしまった私はこっそりと彼を目で追っていた。

二人はベビーカーを見ていた。

女性はサンシェードの深さなどを真剣にチェックして、実際に動きなども確認していた。

押している姿も絵になってて、その横で見ている洋介さんも真剣そのもの。

もしかして洋介さんにも恋人がいて彼女が婚約者だったりして?

でもそれはありうるかもしれない。

だって私にも婚約者がいるけど会っているのは日曜だけ。

もしあの女性が洋介さんの大切な人だとしたら私は洋介さんととんでもないことをしているのでは?と胸が痛くなる。

同時に私の頭の中で赤ちゃんを抱っこしている洋介さんを想像してしまった。

あの二人が恋人同士か確かめてもしそうだったらどうする?

いやどうするもこうするも関係を解消するしかないじゃない。

「泉、あなた何やってるの?」

振り向くと買い物を済ませた母が私の後ろに立っていた。

「な、なんでもないわよ。それより買い物は済んだの?」

母は満足そうにショップバッグを私に見せた。

「じゃあ、行こう」

「そうね。でも考えてみたら泉も律ちゃんと同い年でしょ?育児は早いほうが体力的に楽だからね」

それは遠回しに私に早く子供を産めと言っているようにしか思えなかった。

「私はまだいいの。今は仕事が一番よ」

「そんなこと言ってたら明久さんのお母さんに何を言われるか」

確かにそんな感じがする。

だけど私と明久さんの間に赤ちゃんができる可能性は今のところない。

だって私たちキスはおろか手も繋いだことがないのよ。

それに明久さんにはキス以上のことをする相手がいるんだから……って言ったらどうなるだろう。

でも本当に白紙にしたいなら式場の下見なんかしなかっただろう。
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