泡沫の記憶

兄はオレのことも朱夏のことも
責めなかったけど

きっと
ショックだったと思う



肩を落として


「落ち着いたら
婚約者連れて、帰って来いよ」


帰りにそう言った



朱夏はずっと泣いてて

最後はオレの顔も見なかった



ごめん

朱夏…



好きになったらいけないのに

嫌いにならないで…なんて



忘れないから

忘れないでほしい…なんて



キミの後ろ姿を見送りながら思ったオレは

ズルい



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