泡沫の記憶
「遅くなったから、家まで送る」
「うん、ありがと」
咲田の家まで歩いた
「浴衣って歩きにくいの?」
「うん、少し…」
咲田はチョコチョコ歩いてた
かわいい
咲田と手を繋いだ
咲田が少し恥ずかしそうにしたから
オレも照れた
「男子も手繋ぎたいとか、思うの?」
「それは、思うでしょ
…
もぉ、恥ずかしいから言わせないで」
カラカラ咲田の下駄の音が響いた
ふたりの影が月明かりで
長く伸びた
「ねぇ、小栗」
「ん?」
「今度 、ふーまのかのじょ?って聞かれたら
うんって言っていいの?」
「…うん…
…
だから、恥ずかしいこと聞かないで」
「だって、なんか信じられないんだもん
…鬱陶しいとか思った?」
「いや、別に、思わない、けど…」
「…けど?」
「いや…
かわいいと思った」
「じゃあ、もっとかわいくなるね」
咲田、これ以上かわいくなったら
オレ、心臓壊れるかも…
夢は終わらなかったけど
オレたちの夏休みは終わった