片想いは今日でおしまいでいいよね?
昼休みになると、弘樹はいつも、みんなのまん中で笑っている。隣にいるのは、伊田咲綾(いだ さあや)ちゃん。伊田さんは、弘樹のことが好きだとみんなのもっぱらの噂だ。弘樹の方は、どうなのだろう。咲綾ちゃんが数学が得意なのをしっているあたしは、弘樹と引き離したくて、こんな風に声をかける。

「ねぇ、咲綾ちゃん。このあいだの数学の問題、どうしても解けないの。教えてくれるかな」

咲綾ちゃんはふわりと笑って、

「いいよ。休み時間のあいだに教えてあげる」

咲綾ちゃんは、いい子だ。こんな姑息な真似をする自分を恥じる。

「・・・だから、X=6、Y=9になるのね。分かった?」

「ありがとう。咲綾ちゃん、教え方、上手いね」

「ありがとう」

と言うと、弘樹の隣へするり、と帰って行った。どさくさにまぎれて、あたしも行ければいいのに。

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