優しい温もり【完結】
出会い
校庭から聞こえる”ピーッ”という笛の音。
かすかに聞こえる車の音。
木々をゆらす そよ風が頬を通り過ぎて行くのを感じながら、
窓の外に広がる木々を見ていた。


桜のトンネルを潜り抜け私はこの高校に足を踏み入れたはずが、
気がつけば季節は春から初夏へと移り変わろうとしていた。

教室には先生の声・黒板に文字を書く音
カリカリとペンを走らせる音だけが響いていた。
なんて皆 真面目なんだろうと思いつつ、
私は一人ぼんやりと窓から雲ひとつない空を見上げていた。


「・・・・・美優・・・・・・ちょっと美優」
後ろからつつかれ、私は現実に引き戻された。

顔を上げると、目の前にはダサ男。
やつの名前は知らない。ダサ男で十分だった。

この学校で一番ダサいと思われる教師。
いつも髪型は寝癖でボサボサ。顔には、時代を感じさせる太い黒ふちメガネ。
服もいつも同じ、よれよれのスーツに腕カバー。
そんなの映画でしか見たことなかったよ。
うわさでは若いと聞いていたが、昭和の香りがプンプンする。

で・・・・・なんでこいつが目の前にいるの?

ダサ男は机をトントンと指で叩きながら

「村山さん、ボーっとしてないでしっかり授業聞いてくださいね。」
ボソボソと言いながら前へ戻って行った。

はぁー。最悪!!

今が退屈な授業であったことを再び思い出した。


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