innocent
暮橋市立病院。
そこが母の今いる病院である。
両親共働きだけれど、当然母は産休を取って働けない。だから必然的に父はその分も頑張らなくちゃいけなくて
病院に来るのもほんの数回だ。

ほとんど僕が、学校がある日以外は付きっきりで看る。



「はぁ」


正直、疲れてる。
こういうとき母が一番辛いんだろうけど何度も、何度も、来ては帰り、来ては帰りだと自然に疲れてくる。

当然、それだけでもなく



「啓(さとる)くん、親戚がね、ケーキ買ってきてくれたの。マナが一人だから、一緒に食べてあげてくれない?」なんて同世代の歳の子を持つ親に誘われたり、直接誘われたり。
おばあさんやおじいさんたちにはお菓子を押し付けられたりする。


そういうのも、正直めんどくさくてしょうがなく。




時折見てしまう重病患者なんか見ると、露骨に嫌な顔をしてしまう。

そんな自分が堪らなく、嫌で




「でもどうすることもできないんだよね」



そもそもどうしてそこまで親しくない人間に笑わなくてはいけないのだろうか。

愛想がない?

そりゃ当たり前。

だって知らないから
知らない人間だから

僕は知らない人間にまで何の分別もなく愛想を振りまけるようなできた人間じゃない。

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