innocent
「初顔だ!」
そう言った彼女は、近くの看護師に向けてニヤーッと歯を見せて笑った。
「それを言うなら新顔じゃない?」
「違うよー初顔合わせの略〜」
「わかりにくいわね…」
初めて見た君は、
僕と正反対に見えた。
なんでかな。
そう見えたんだ。
そんな風に笑ったことがないからかもしれない。
小さいときはともかく、僕はこんなに純粋に笑う人を、家族以外で見たのは久しぶりだった。
「私、松木小絵っていいます。あなたは、なんて言うんですか?」
「え」
「え、じゃなくて、名前!あなたの名前、教えてください。」
「あぁ。倉石です。倉石、啓」
「何歳?」
「今年、16。」
「えっ!同じだね!」
私もなんだー。私のことは小絵でいいよ!じゃあ啓くんだね、覚えた!もちろん敬語はなしで!なんて勝手に決める彼女の目はキラキラしていて、まさしく小さな子どもみたいだな、なんて思った。
「倉石くんってお母さんが入院なさってるのよね。」
「え!なんで知ってるの。看護師さんストーカー?」
「小絵ちゃんお昼抜き!」
「うっそ嘘だって今の!やめて私飢え死にしちゃう!!「……ぷ」
「「…え?」」
「あ、すみません、けどっ可笑しくてっ…!っ」
「「……」」