innocent
「うわー…こりゃ納得だわ…」
「なにが」
「倉石くんってもはやナースステーションの中じゃ有名人なのよ。めちゃくちゃ可愛い男の子だ、って」
「へーー」
「………」
有名人?
だれが
可愛い?
だれ、が、?
「………」
「女の子みたい。うぅん、絶対普通の女の子より可愛いわ。」
男であることを、かなり否定されたような気がした。
いや、されたのだけど。
「看護師さん、それは本人の前じゃ言っちゃダメだよーっ」
「あ、そうね、ごめんなさいね。」
「…」
ショックが大きすぎて呆然と立つ。
嬉しいわけがない。
全然知らない人に何故か名前を知られてて、その上、可愛い、なんて。
でも思えばあんなに笑ったのも久しぶり。
初めて会った人に、
笑った顔を見せるのも、
久しぶり、だった。
「……忘れてクダサイ。さっきの笑いは、忘れて…」
「えーー!だって凄く可愛かったのにっ!」
「………………………」
僕、絶対疲れた目になってる。
大声で「可愛い」なんて言われたのもショックだし、何よりこの子のテンションについていけない。
僕ってこんなに軟弱だっけ。いや、きっとこの子が変なんだ。
そう思うことにする。
「でもホント、男の子にしておくにはもったいないくらい可愛いよね」
「それはどういう意味デスカ。」
「え?いい意味でとってよ!」
「無理。嬉しくない」