転生人魚姫はごはんが食べたい!
「貴方たちを助ける変わりに、私たちを助けてもらいます。私たちを守ってほしいと言うべきかしら」

「守る? 俺たちが……一体何からだ?」

「貴方たち人間からですわ」

「なんだと?」

「知らないとは言わせない。私たち、人間の世界では高値で取り引きされているのでしょう」

 金色の瞳を携えた見目の整った容姿。鱗に覆われた足は人間にしてみれば珍しく、見世物にされている。観賞用にと取り引きされることもあるそうだ。そのために私たちは人間に近付くことを危険なことだと教えられている。

「私たちの要求は簡単よ。人魚を捕らえることを罪として取り締まってほしいのです」

 いくら人間が危険だと説明しても好奇心に負ける者はいる。けれど私たちには捕らえられた仲間を救うことは出来ない。それを食い止めることも出来ない。人間のことは人間に対処してもらうしかないのだ。

「なるほど……。そっちの望みは把握した。けど、俺らを助けるって条件に見合うかは微妙なところだ」

「つまり?」

「なあ、エスティーナ姫。お前は話がわかりそうな奴だから言わせてもらうが、割に合わないとは思わないか?」

「私は昔、貴方を助けたはずよ」

 憶えてはいないけれど、交渉の材料に使わせてもらう。ラージェス様も痛いところを突かれたと苦い顔をしていた。

「もちろん感謝はしてるいる。個人的には頷いてやりたいが、俺も人の上に立つ身なんだよ」

 お前も姫ならばわかるだろと視線が訴えている。やっぱり簡単には頷いてくれない相手のようだ。

「いいわ。貴方たちが私たちを守って下さるのなら、私たちも貴方たちを守ることを約束します」

「何?」

「ねえ、ラージェス様。貴方たちは勘違いしているのではないかしら? 私は今、交渉……対等な立場での取引を行っているけれど、私たちを敵に回して無事に航海が出来ると思う?」

「なんだと!?」

 今度は人間たちの間に緊張が走る。

「もしかして、私たちをただ人間に捕まるだけのか弱い存在だと思っているのではなくて? 人魚を大人しいだけの種族と思われては困りますわ。私たちは海の支配者、私たちを敵に回して安全な航海を望めるとは思わないことね」

 仲間たちは私の合図で武器を構える。もし海中から船を攻撃されたとしたらどう? 怖ろしいでしょう? 今度は私が視線で訴えかける番だ。
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