転生人魚姫はごはんが食べたい!
夢中で歌い終えた私は旦那様を見つめる。海面からは距離があるけれど、私たちの視線はしっかりと交わっていた。心が近付いた気がする。旦那様もそう感じていてくれたのなら嬉しい。
もう一度呼びかけると旦那様は魔女の腕から抜け出し船の縁に足をかけた。海の魔女が呆気なく旦那様を解放したことにも驚いたけど、何をするつもりだろう。
「て、旦那様!?」
あろうことか勢いをつけて海に飛び込まれました。
え、なんで!?
少し離れた所に飛び込んでくれたおかげで衝突することはなかったけど、それでも盛大な水しぶきを被ってたほどだ。
「旦那様!? 旦那様、無事ですか!?」
そばまで泳いでいくと伸びた腕に引き寄せられて危うく沈みそうになった。私は人魚の姿で、二人とも海に入って――まるで初めて会った日のようだと思う。
「……悪い。お前のこと、今すぐ抱きしめたかった」
「ど、して……?」
「妻を抱きしめるのに理由がいるのか?」
「私のこと、憶えてるんですか?」
「当たり前だろ。お前の歌だって忘れたことねーよ。エスティ」
エスティと、また呼んでくれるんですね。
その一言で涙が溢れた。旦那様の方が大変だったというのに泣きじゃくる自分が情けない。それなのに、この人の腕の中に入られることが嬉しくて、名前を読んでもらえることが幸せで、干からびるまで泣き続けられそうだ。顔を上げると旦那様まで泣きそうな顔をしている。
「ありがとな、俺のために泣いてくれて。けど、ああ……お前が俺のために泣いてくれたら幸せだって思ったんだけどな。前に言ったあれ、訂正させてくれ。お前の泣きが顔は出来れば見たくない。ずっと笑っててほしいんだ」
「私……もうっ、旦那様がいてくれないと笑えませんから!」
「エスティ?」
「旦那様に避けられて寂しかったです。忘れられて、悲しかったんです! 私は旦那様のことが好きだって、思い知らされましたよ!」
旦那様の驚く表情が見られたけど、それは私の涙に滲んでいった。
私は歌を捧げて想いを告げたけれど、喜ばせるどころか困らせてしまったらしい。旦那様は辛そうに唇を噛みしめていた。海の魔女が言ったように私と結婚したことを後悔していたのかもしれない。
もう一度呼びかけると旦那様は魔女の腕から抜け出し船の縁に足をかけた。海の魔女が呆気なく旦那様を解放したことにも驚いたけど、何をするつもりだろう。
「て、旦那様!?」
あろうことか勢いをつけて海に飛び込まれました。
え、なんで!?
少し離れた所に飛び込んでくれたおかげで衝突することはなかったけど、それでも盛大な水しぶきを被ってたほどだ。
「旦那様!? 旦那様、無事ですか!?」
そばまで泳いでいくと伸びた腕に引き寄せられて危うく沈みそうになった。私は人魚の姿で、二人とも海に入って――まるで初めて会った日のようだと思う。
「……悪い。お前のこと、今すぐ抱きしめたかった」
「ど、して……?」
「妻を抱きしめるのに理由がいるのか?」
「私のこと、憶えてるんですか?」
「当たり前だろ。お前の歌だって忘れたことねーよ。エスティ」
エスティと、また呼んでくれるんですね。
その一言で涙が溢れた。旦那様の方が大変だったというのに泣きじゃくる自分が情けない。それなのに、この人の腕の中に入られることが嬉しくて、名前を読んでもらえることが幸せで、干からびるまで泣き続けられそうだ。顔を上げると旦那様まで泣きそうな顔をしている。
「ありがとな、俺のために泣いてくれて。けど、ああ……お前が俺のために泣いてくれたら幸せだって思ったんだけどな。前に言ったあれ、訂正させてくれ。お前の泣きが顔は出来れば見たくない。ずっと笑っててほしいんだ」
「私……もうっ、旦那様がいてくれないと笑えませんから!」
「エスティ?」
「旦那様に避けられて寂しかったです。忘れられて、悲しかったんです! 私は旦那様のことが好きだって、思い知らされましたよ!」
旦那様の驚く表情が見られたけど、それは私の涙に滲んでいった。
私は歌を捧げて想いを告げたけれど、喜ばせるどころか困らせてしまったらしい。旦那様は辛そうに唇を噛みしめていた。海の魔女が言ったように私と結婚したことを後悔していたのかもしれない。