転生人魚姫はごはんが食べたい!
 それならそうと、私は貴方の言葉で終わらせてほしいのです。

「エスティ、俺は! お前から永遠の命を奪っただろ……」

「旦那様?」

「俺はお前にどう償えばいい? 家族から引き離して、永遠も奪ったんだ。俺は、お前から奪ってばかりいる!」

 え? もしかして、後悔とか悩みってそれですか?

 頭から盛大に水を被った旦那様。拭いきれない水滴が後から後から頬を伝い、泣いているようにも見えた。私はその頬に手を伸ばし、拭うように触れていく。

「ならずっと一緒にいて下さい」

「俺が憎くはないのか!?」

「何故? 覚悟ならとっくに出来ていましたわ。私、旦那様のそばにいられるのなら永遠なんていりません。元々執着していなかったんですよ。私はただ、美味しいものが食べられて、愛する人の隣で生きていければ幸せなのです。それに、明るく見えて実は思いつめやすくて、寂しがりな人を放ってはおけません」

 広い海から私を見つけてくれた旦那様! 海の魔女に何を言われたって、マリーナ姉さんに認めてもらえなくたって、旦那様にだってこの想いは否定させないんですからね。

「言ってくれるな」

 旦那様、やっと笑ってくれましたね。ほら、たったそれだけのことで私は幸せを感じられるんですよ!

「旦那様が一緒にいてくれるのなら怖くありませんわ。ですから後悔なんて微塵も必要ないのです。それよりも旦那様にはするべきことがあるはずですわ! 約束、忘れてしまったんですか!?」

「約束?」

「私のことを忘れても忘れなかった癖に、今更しらばっくれるなんてなしですわよ! 最初に言ったじゃないですか。美味しい物、たくさん食べさせて下さいね。旦那様!」

 旦那様は口をぽっかりと開けている。

 そんなにおかしなことを言ったかしら? むしろ何度も言ってますよね?

「いや、俺は……てっきり冗談や、俺への慰めだと思っていたんだが……」

「はい? 私は本気です! まだまだ食べたりないんですから、この命ある限り逃がしませんよ!」
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