転生人魚姫はごはんが食べたい!
 港に戻った私たちは泣きながら怒るエリクに迎えられる。今回の一件では誰よりも苦労をかけてしまった相手を私も労った。旦那様はひたすら謝り倒しているし、ぽかぽかと殴られている。そんな騒動を聞きつけてか、ちょうど港に到着していたイデットさんと顔を合わせてしまった。

「これは一体、なんの騒ぎです?」

 問い詰められた私は苦し紛れに言った。

「イデットさんを迎えに来たんですよ。早く会いたくて!」

 旦那様も上手に便乗してくれました。

「ああ、エスティの言う通りだ。荷物も重くて大変だろうからな。荷物持ちにと俺も立候補したんだ」

「坊ちゃまっ! ああっ、わたくしのために港まで足を運んでくださるなど、イデットは幸せで泣いてしまいそうです!」

 イデットさんにとって旦那様の言葉は何よりも説得力があるんですね。目に見えて喜んでいるのがわかる。

「おや、エリクも荷物持ちですか?」

「いや僕は荷物とか持ちたくないんだけど」

 素で答えないのエリク! そこは嘘でも誤魔化して! 仕方ないので私がフォローを入れておく。

「エリクはケーキを買いに来ました。イデットさんは長旅でお疲れでしょうから、甘い物でも食べて疲れを癒してもらいたいと、自ら名乗り出てくれたのですわ」

「そういうことでしたか。またみなでケーキを食べるのも悪くはありませんね」

 悪くないどころの提案じゃない。私にとっては夢のような提案だ。食べ物はいつだって囲んでいたい主役だ。

「そうですね。早く帰ってみんなで美味しい物を食べましょう!」

「賛成だ」

 一番に賛同してくれた旦那様。
 成り行きでケーキを買いに行かされたエリク。
 旦那様の優しさに感涙するイデットさん。

 これが私のハッピーエンドなんだけど……どうだった、エリク? 満足してもらえたらいいわね。
 私? 私はね――

 最高に幸せよ!!

 私たちは微笑ましい気持ちでお城に帰った。イデットさんがニナに縋りつかれ、騒ぎの全貌を知って腰を抜かすまであと少し。
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