転生人魚姫はごはんが食べたい!
この世界の文明は、まだそこまでの発展を見せてはいない。海から何度か港町の様子を偵察したこともあるけれど、コンクリートのビルなんて一つも存在していなかった。町行く人たちの服装も、まるで歴史の授業。西洋ファンタジーの世界を覗いているみたいだった。
ところで前世の私についてだけれど。
前世の私はよほど働き者だったのね。思い出す場面ではひたすら仕事に打ち込んでいたわ。
毎日書類を相手にしては机に向かっていた。常に疲労と肩こりに悩まされていたけれど、その点人魚は素晴らしいわね。立って机に向かう必要がないのよ。
まあそれはいいとして、人魚には他に重大な問題があったわ。
ええ、それはもう大問題よ……
「どうして人魚はお腹が空かないのよー!!」
仕事を頑張った自分へのご褒美って、なんだった?
私にとってのご褒美。それはね、美味しい物だったのよ!
辛い仕事もその後に待ち受けているごはんのことを思えば頑張ることが出来た。
奮発して、ちょっといいお肉を食べたり。おかわり自由のレストランで端から順にお皿に盛ったり。限定スイーツのために何時間も並んだり。そんなことが日々の楽しみだったわ。もちろん小説や漫画も楽しみの一つだけど。
朝から晩まで働いて、時には残業もして徹夜して。仕事帰りにはコンビニでごはんを買うのが日課。季節によって品を変えるコンビニは私の心を掴んで離さず、頑張った日には贅沢にデザートも添えたわ。
休みの日にはネットで調べたおすすめの店に出かけた。そこに美味しいと評判の料理やお菓子が待っているのなら、何時間でも並んでいられたわ。
ボーナスが入った日には高級ホテルのレストランでディナー。ホテルの雰囲気や、食事に恥じない自分になりたくて、このためだけに精一杯のおめかしとテーブルマナーを学んだ。
そうして美味しいものを食べて、また仕事に戻る日々。長く働くうちに難しい仕事も任されるようになった。後輩もできて、責任も生まれて、時には酷く疲れてしまうこともある。でも美味しいものを食べたのなら、また頑張ろうと思えた。
けど人魚なんてやってたら永遠にチャンスはないじゃない!
海水飲み放題!?
そんなの嬉しくないわよ!
やってられないわ!
私はごはんが食べたいの!!
だって私は知っている。前世で食べていた料理の美味しさを、食材の味を。身体が、舌が、脳が憶えている。
ところで前世の私についてだけれど。
前世の私はよほど働き者だったのね。思い出す場面ではひたすら仕事に打ち込んでいたわ。
毎日書類を相手にしては机に向かっていた。常に疲労と肩こりに悩まされていたけれど、その点人魚は素晴らしいわね。立って机に向かう必要がないのよ。
まあそれはいいとして、人魚には他に重大な問題があったわ。
ええ、それはもう大問題よ……
「どうして人魚はお腹が空かないのよー!!」
仕事を頑張った自分へのご褒美って、なんだった?
私にとってのご褒美。それはね、美味しい物だったのよ!
辛い仕事もその後に待ち受けているごはんのことを思えば頑張ることが出来た。
奮発して、ちょっといいお肉を食べたり。おかわり自由のレストランで端から順にお皿に盛ったり。限定スイーツのために何時間も並んだり。そんなことが日々の楽しみだったわ。もちろん小説や漫画も楽しみの一つだけど。
朝から晩まで働いて、時には残業もして徹夜して。仕事帰りにはコンビニでごはんを買うのが日課。季節によって品を変えるコンビニは私の心を掴んで離さず、頑張った日には贅沢にデザートも添えたわ。
休みの日にはネットで調べたおすすめの店に出かけた。そこに美味しいと評判の料理やお菓子が待っているのなら、何時間でも並んでいられたわ。
ボーナスが入った日には高級ホテルのレストランでディナー。ホテルの雰囲気や、食事に恥じない自分になりたくて、このためだけに精一杯のおめかしとテーブルマナーを学んだ。
そうして美味しいものを食べて、また仕事に戻る日々。長く働くうちに難しい仕事も任されるようになった。後輩もできて、責任も生まれて、時には酷く疲れてしまうこともある。でも美味しいものを食べたのなら、また頑張ろうと思えた。
けど人魚なんてやってたら永遠にチャンスはないじゃない!
海水飲み放題!?
そんなの嬉しくないわよ!
やってられないわ!
私はごはんが食べたいの!!
だって私は知っている。前世で食べていた料理の美味しさを、食材の味を。身体が、舌が、脳が憶えている。