転生人魚姫はごはんが食べたい!
 おかげで向かう先ではその度に旦那様との仲を質問責めだ。特に女性陣から興味津々に迫られると緊張してしまう。

 ああ、困ることはまだあったわね。このお城、広すぎない!? 早く道を憶えないと迷子になってしまうわ。

 そんな私は現在旦那様に付き添われ私室へと向かっている。早く道を覚えなければと思うも、今はちっとも構造に集中出来そうにない。それというのも先ほど終えたばかりの夕食が原因だ。

 まず、いい魚が手に入ったからと、急遽本日のメニューは魚料理に決まった。
 冷蔵庫のないこの世界では新鮮な魚を食べられるのは港町の特権だそうで、提供された料理は魚のムニエルだった。
 前世におけるムニエルとは、小麦粉などの粉をまぶしバターで焼いたもの。この世界でも同じ手法を使っているのかは不明だけれど、やはり見た目は私の知るそれと同じだった。
 まず見た目が美しい。私自身も自分で作ったことはあるけれど、それとは比べ物にならないほど盛り付けはおしゃれ。
 使われている魚は白身魚の切り身らしく、皿の中心に置かれている。立体的に組まれた野菜は食べてしまうのが勿体ないほど調和がとれていて、組み上げられた食材は芸術作品だ。
 いただきますと手を合わせてから、食べた瞬間のかりっとした触感には思わず笑みが零れた。
 たっぷりと懐かしい魚の味を堪能し、食事を終えたところで迎えたのがサプライズ。

 なんと私の歓迎のために、特別にケーキが用意されていたのよ! それも私が前世で一人食べていたようなレベルのケーキじゃあないわ。
 いい? 一言で言うのなら、結婚式のケーキ入刀にでも使われそうなケーキよ!

 白いクリームで丁寧にコーティングされたスポンジ生地は贅沢にも三段重ね。赤い苺、カットされたフルーツ、それらが色鮮やかな装飾となりケーキをさらに美しく引き立てる。ちりばめられている花さえも食べられることを教えられた。
 ケーキの真ん中にはプレートが乗せられていて、そこに書かれた『ようこそ奥様!』の文字に感動した私。今度は感動の涙を流して旦那様を狼狽えさせてしまった。
 そんな私に旦那様は優しく言ってくれた。好きなだけ食べていいんだぞ、と。
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