転生人魚姫はごはんが食べたい!
「私はこの国の人間になりました。ですから自分の暮らす国について知りたいと考えています。そこでニナ、貴女に教えを乞うことは出来ますか?」

「わ、私がですか!? 私、奥様に教えられるような知識はとても!」

「私が知りたいのは難しい事じゃないわ。たとえば町のこと、たとえばこのお城のこと。何を食べて、どんなものが売っているのか、そういう当たり前のことでいいのよ。私はまだ何も知らないもの。旦那様に恥をかかせるわけにはいかないし、教えてもらえると助かります」

 きっと頼めばイデットさんも教えてくれるはず。けれど叶うのなら、私はニナの口から語られるこの国を知りたいと思った。

「ニナは長くこの辺りに暮らしているそうね。町についても詳しいのでしょう?」

 イデットさんはニナを未熟と言った。けど私だって、とてもニナに何かを与えられるほどの力はない。まだまだ未熟なのは私の方。だからこそ、二人で足りない部分を補い合えたらいいと思っている。
 丁寧に知りたいことを話せばニナも安心したのか緊張を解いてくれた。

「それくらいなら、私でもなんとか……」

「もちろんニナの仕事の負担にならない範囲でいいわ」

「では今日からにしましょう。大丈夫です。私の仕事は奥様が不自由なく過ごす手助けをすることですから、それ以上に優先される仕事はないんですよ。きっとイデット様も了承してくれますから!」

「イデットさんは随分と信頼されているのね」

 旦那様同様にイデットさんも使用人たちから慕われているらしい。

「はい! イデット様は、確かに見た目はちょっと怖い人ですけど、とても頼りになりますし優しくて……あ! あ、あの、私が怖そうだって言ったことは、内緒にしてもらえますか!?」

「安心していいわよ」

「良かった……」

 慕われているのは伝わったけれど、この怯えよう。怒らせると怖い人でもあるようね。私も気をつけましょう。

「では奥様、これから実際に町の様子を見に行きませんか?」

 大人しいけれどしっかりと自分の意見も持ってる。ニナは頼もしい侍女だった。
< 53 / 132 >

この作品をシェア

pagetop