転生人魚姫はごはんが食べたい!
「そうね。不思議な人だったわね」

「そうですか? 確かに独特の雰囲気の人でしたけど、素敵な方でしたよ」

「ニナったら、よほど占いの結果が良かったみたいね」

「も、もしかして奥様っ……何か良くない結果が出たんですか!?」

 あれは、どう捉えるべきなのかしら……

「そんなことはない、と思うけれど……。占いとはあまり縁のない生活を送っていたから、どう受け止めたらいいのか、占いとの付き合い方がわからないのかもしれないわ」

 あの人もそんな私の本質を見抜いていたのかもしれない。仕事ばかりの毎日では雑誌なんてもっての外。テレビの占いコーナーだって満足に試聴したのはいつが最後だろう。

「奥様……苦労されていたんですね!」

「へ?」

 まあ、確かに仕事は大変だったけれど……

「いいんです! あの、私たちちゃんとわかってますから!」

「何が?」

「異国でたくさん苦労されていたんですよね!」

「そういう解釈なの?」

「解釈?」

「こちらの話です」

「だから奥様、遠慮なさらないで下さいね! このお城で働く人たちって、事情を抱えた人も多いんです。だから私たちみんな、ちゃんとわかってます。旦那様が選んだ方なら間違いはないと言うか、奥様にはこれまで苦労された分、美味しい物をたくさん食べたり、とにかく幸せになってもらいたいんです!」

「ニナったら……貴女、随分と話のわかる人なのね! そうなのよ。美味しい物を食べると幸せになれるのよ! 一緒に美味しい物を食べまくりましょうね!」

「はい!」

 私たちは手を取り合って感動を分かち合う。歩いてお腹にも余裕が出来たことだし、何か食べてもいい頃合いだろう。

 行きたい店はあるけれど、ニナと二人で向かっても大丈夫なものかしら……

「エスティ?」

 思案する私を呼ぶのは聞き慣れた声だ。慣れ親しんだ私の愛称だけれど、それを知るのはこの国ではまだほんの一握り、それも呼ぶことを許した人物は一人だけである。振り返ると旦那様が驚いた表情で私たちを見つめていた。

「こんなところで何してるんだ?」

 足早に駆け寄るなり追及される。

「ニナに頼んで町を案内してもらっていたのですわ」

「なんだ。俺に頼めばいつでも案内してやったのに」
 
 旦那様は拗ねた口調で呟いた。
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