転生人魚姫はごはんが食べたい!
現代だと一人で居酒屋も焼き肉屋も大歓迎な時代だけれど、まだこの世界の文化には早かったようで。だからこそ旦那様がいる今がチャンスなのよ!
その店は入り組んだ路地を抜けた先にあった。入口は狭さを感じる店構えだけれど、店内は奥行きがあり開放的な造りとなっている。窓が少ないためか室内は昼でも薄暗かった。
フロアにはひしめき合うようにテーブルが並び、あちこちから談笑する声が重なる。カウンター席の前に備え付けられた棚にはずらりと酒瓶が、店内にはそれこそ無造作に樽が置かれていた。
これよこれ! このファンタジー世界の酒場感というのかしら、一度堪能してみたかったのよね! それにこういったお店の方が情報を手に入れやすいはずだわ。
「素敵なお店ですね」
店内に足を踏み入れた瞬間の率直な感想だ。
「気に入ったか? 料理も美味いんだぜ」
「旦那様もこういったお店に行くことがあるんですね」
「王子はこういう店に出入りしないと思ったか?」
旦那様がひっそりと声を落とす。お城で会えばきちんと王子様に見えるのに、町を歩く姿は道行く人たちと変わらない。船に乗っている時にも思ったけれど、船乗りも似合う人だ。だから今回もまったく違和感はない。
「多少驚いてはいますけど、いい趣味だと思いますよ。……旦那様?」
驚くような旦那様を前に、何かいけないことを言ってしまったのかと発言を思い返す。
「お前に褒められて嬉しかったんだ。嬉しいぜ、エスティ」
どこか噛み合わない会話のようにも感じるけれど、旦那様が喜んでいるのならそれでいい、のかしら?
「ま、まあその、こんなことでよろしければ、いつでも……?」
「そうだな。また一緒に来ようぜ」
その店は入り組んだ路地を抜けた先にあった。入口は狭さを感じる店構えだけれど、店内は奥行きがあり開放的な造りとなっている。窓が少ないためか室内は昼でも薄暗かった。
フロアにはひしめき合うようにテーブルが並び、あちこちから談笑する声が重なる。カウンター席の前に備え付けられた棚にはずらりと酒瓶が、店内にはそれこそ無造作に樽が置かれていた。
これよこれ! このファンタジー世界の酒場感というのかしら、一度堪能してみたかったのよね! それにこういったお店の方が情報を手に入れやすいはずだわ。
「素敵なお店ですね」
店内に足を踏み入れた瞬間の率直な感想だ。
「気に入ったか? 料理も美味いんだぜ」
「旦那様もこういったお店に行くことがあるんですね」
「王子はこういう店に出入りしないと思ったか?」
旦那様がひっそりと声を落とす。お城で会えばきちんと王子様に見えるのに、町を歩く姿は道行く人たちと変わらない。船に乗っている時にも思ったけれど、船乗りも似合う人だ。だから今回もまったく違和感はない。
「多少驚いてはいますけど、いい趣味だと思いますよ。……旦那様?」
驚くような旦那様を前に、何かいけないことを言ってしまったのかと発言を思い返す。
「お前に褒められて嬉しかったんだ。嬉しいぜ、エスティ」
どこか噛み合わない会話のようにも感じるけれど、旦那様が喜んでいるのならそれでいい、のかしら?
「ま、まあその、こんなことでよろしければ、いつでも……?」
「そうだな。また一緒に来ようぜ」