転生人魚姫はごはんが食べたい!
「いや、可愛いだろ。笑った顔も、ちょっと怒った顔も、美味い物前にして喜んで、たくさん表情を変えてさ。素直に感情を伝えてくるところとか、可愛いと思うぜ。それに、お前の涙は綺麗だな。こんな女が自分のために泣いてくれたら、男冥利に尽きるってもんだろ」
涙って、それキッシュを前にして泣いた時の話ですよね!? 私にとってはただの恥ずかしい過去でしかありません!
「早く俺を好きになってくれよ、奥さん。俺がお前のことを好きな分だけ、お前にも俺を好きになってもらいたいんだ」
「旦那様の頑張り次第ですわねっ!」
この人はどこまで私の心を乱すのか。出会ってからまだ日は短いけれど、最初から心の休まらない人だった。抱きしめられて、結婚することになって、実は私のことが好きだったなんて……旦那様といるとどきどきしてばかりだ。今のところほとんどが恋のときめき的な意味ではなく驚きばかりですけど。
「覚悟してろよ」
私はいつか、この人に同じだけの想いを返す日が来るのかしら……
思案する私の意識を引き戻すように風が吹き抜ける。髪を攫われた私は煽られたことで海の方を振り向いていた。この町は少し高い場所に上がればどこからで海が見える。海で育った私にとって、陸に居ながらも故郷を感じられる様子は嬉しいものだ。
「あ……」
潮風は私に故郷の景色を思い出させる。
そこに暮らす仲間のことを、人間の世界に送り出した娘を心配する家族の姿を思い浮かべてしまう。それはまるで海に、家族に呼ばれているような心地だった。
「エスティ?」
私を呼ぶ声がする。けれど私は海を見つめたまま動けなくなった。
「旦那様……私、まだ帰れません」
「何か忘れたのか?」
「私は、こんなにも良くしてもらっている。今日一日で私は、いいえ。初めてお城に招かれた日から、旦那様の優しさをたくさん知りました。けれど仲間たちは、まだそのことを知りません。旦那様がこんなにも私たちのために動いて下さったことを知らずにいます!」
それがもどかしくてたまらない。
「旦那様は私たちが思う以上に約束を守ろうとしてくれたって、伝えないと! みんなに、私の旦那様は素晴らしい人間だって。だから私たちもしっかり海を守ろうと……あの、先に帰ってもらっていいですから!」
とっくにお城が見える場所まで来ていたけれど、私は旦那様の静止を振り切って元来た道を走り出す。
「おいエスティ!?」
早く伝えたい。私の旦那様がどれほど素晴らしいくて優し人なのか。でもそれを知っているのは、国のみんなに伝えられるのは私だけしかいない。
旦那様と同じだけのことが私たちに出来るかはわからないけれど、覚悟を持つことは出来る。だから私は一刻も早く伝えたいのだ。
涙って、それキッシュを前にして泣いた時の話ですよね!? 私にとってはただの恥ずかしい過去でしかありません!
「早く俺を好きになってくれよ、奥さん。俺がお前のことを好きな分だけ、お前にも俺を好きになってもらいたいんだ」
「旦那様の頑張り次第ですわねっ!」
この人はどこまで私の心を乱すのか。出会ってからまだ日は短いけれど、最初から心の休まらない人だった。抱きしめられて、結婚することになって、実は私のことが好きだったなんて……旦那様といるとどきどきしてばかりだ。今のところほとんどが恋のときめき的な意味ではなく驚きばかりですけど。
「覚悟してろよ」
私はいつか、この人に同じだけの想いを返す日が来るのかしら……
思案する私の意識を引き戻すように風が吹き抜ける。髪を攫われた私は煽られたことで海の方を振り向いていた。この町は少し高い場所に上がればどこからで海が見える。海で育った私にとって、陸に居ながらも故郷を感じられる様子は嬉しいものだ。
「あ……」
潮風は私に故郷の景色を思い出させる。
そこに暮らす仲間のことを、人間の世界に送り出した娘を心配する家族の姿を思い浮かべてしまう。それはまるで海に、家族に呼ばれているような心地だった。
「エスティ?」
私を呼ぶ声がする。けれど私は海を見つめたまま動けなくなった。
「旦那様……私、まだ帰れません」
「何か忘れたのか?」
「私は、こんなにも良くしてもらっている。今日一日で私は、いいえ。初めてお城に招かれた日から、旦那様の優しさをたくさん知りました。けれど仲間たちは、まだそのことを知りません。旦那様がこんなにも私たちのために動いて下さったことを知らずにいます!」
それがもどかしくてたまらない。
「旦那様は私たちが思う以上に約束を守ろうとしてくれたって、伝えないと! みんなに、私の旦那様は素晴らしい人間だって。だから私たちもしっかり海を守ろうと……あの、先に帰ってもらっていいですから!」
とっくにお城が見える場所まで来ていたけれど、私は旦那様の静止を振り切って元来た道を走り出す。
「おいエスティ!?」
早く伝えたい。私の旦那様がどれほど素晴らしいくて優し人なのか。でもそれを知っているのは、国のみんなに伝えられるのは私だけしかいない。
旦那様と同じだけのことが私たちに出来るかはわからないけれど、覚悟を持つことは出来る。だから私は一刻も早く伝えたいのだ。