転生人魚姫はごはんが食べたい!
潜入捜査でパーティーへ
 こうしてエリク様と秘密を共有することになった私。一応誤解のないように、エリクから文字を教わることは旦那様公認だ。報告をした時の旦那様はとても驚いた様子で、何度も本当にと確認されたけれど。主にエリクがね!
 あれから数日、私は毎日のように机に向かっている。エリクが用意してくれた教材と格闘しながら、真面目に勉強に励んでいるのよ。勉強は大変だけど、メニューのためにも頑張らないといけないわ。それに今の私には読みたい本もある。

「早く読んでみたいわね」

 エリクから借りた本は大切にしまってある。エリクと友達のような関係になれたこと、そして新たな楽しみが出来たことに、私は笑みが溢れるのを感じていた。
 それはそれとして。一つ解決すれば別の問題が浮上する。それが人間というものだと私は思い出していたところだ。

「もっ、だめ……限界……」

 本来なら夕食後の勉強タイムのはず。けれど今日ばかりは我慢の限界にペンを投げてしまった。

「どうして人は肩が凝るの!?」

 この懐かしい首回りのびきびきとした感覚、忘れようがない。勉強に仕事に、人間の生活とは切っても切り離せないもの。それが肩凝りだ。

 そういえば旦那様も自分で肩を揉む仕草をしたり、首を回していることがあったわね。あの人も執務仕事で疲れていたりするのかしら……

 悩んだ私は旦那様を突撃しました。

「旦那様! 私といいことしませんか?」

 そんな私の誘いから、夫婦による初めての肩叩きが始まろうとしている。最初は驚いていた旦那様だったけれど、ちょうどいいと言って私の訪問を歓迎してくれた。

 何がちょうど良かったのかしら? その件については肩を揉みながらじっくり話し合えばいいわよね。

「さあさあ旦那様、座って下さいな。私から言い出したのですから、まずは私からですわ。いきますわよ!」

 旦那様の肩に手を乗せると、広くて逞しいことに驚かされた。

 そうよね。しっかりお腹に筋肉がついている人だもの。肩だって、それはしっかりしているわよね……羨ましいっ!

 私は妬みを動力に旦那様の肩揉みを始める。
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