ホワイトデーに本命チョコを!
私が工業高校に入学して、一ヶ月ぐらいたった頃。
まだ高校の友達がひとりも出来ていなかった。
周りは男子ばかりだし、自分から話しかける勇気なんてない…
私って、そんなに話しかけづらいタイプなのかな…?
と、落ち込みながら、
食堂でオムライスを食べていた。
教室に帰って席につくと、
教室の電気をつけたり、消したりを繰り返して
ふざけている男子や、
それを見て、いっそう賑やかになる教室。
男子たちが廊下にわいわいと集まっていくのが見える。
いいなぁ…楽しそう。
私もまぜて欲しい…
男子達の仲の良さを感じて、
友達の存在が余計に羨ましくなった。
そんなとき、
一人の男子が声をかけてきた。
凄く嬉しかった。
まあ、でも、話しかけてきた内容が、
私の口元にケチャップがついているって、
内容だったんだけど…
さっきのオムライスじゃん!って、
びっくりして、恥ずかしくなったけど、
それ以上に私に話しかけてくれたのが嬉しくって。
思わず友達になってって、言っちゃったんだっけ…
高校に入って初めての友達。
大切な、大切な、私の友達。
だからこそ、
彼への恋を自覚したとき、
友達としての良い関係が壊れちゃうんじゃないかって、不安だった。
友達としてなら声がかけられてたのに…
好きになった途端、話しかけるのが難しくなってしまう。
当たり前にできてたことが、
当たり前にできなくなってしまった。
バレンタインだって渡せなかったし、
ホワイトデーだって…………。
彼の机の席を横目で見る。
ケチャップがついてた時、
彼は耳元で教えてくれた。
きっと、周りに聞こえないように、だろうなぁ…
出会った時から、彼はいつも優しい…。
そういう所も好き。
愛おしさが込み上げてくる。
今、教室には私ひとりだけ。
彼の席に座ってもいいかな…
みんな帰っちゃったし、
きっと、バレないよね…?