ホワイトデーに本命チョコを!
えっへへ。
座っちゃった。
渡すはずだったチョコを、
彼の机の上に置いて、じっと見る。
「好きだよ」
誰もいない教室の中、呟いた。
…………なんか恥ずかしくなってきた。
自分の席に戻ろうとすると、
「…………水木さん?」
え?なんで…?
帰ったはずの彼がいた。
ガタッ!
急いで立ち上がり、
かばんを持って帰ろうとする。
「あ、待って」
「成瀬くん?ごっ、ごめんね!?」
顔が熱くなるのを感じる。
恥ずかしい。
「僕は大丈夫だから。待って」
彼は片腕を伸ばし、ドアを塞いだ。
逃げられない。
「それは何?」
彼の目線の方向は、
私が手に持っている
チョコが入った小さな紙袋。
「こ、れは…何でもないよ」
勇気がない私は、素直に言えない。
「教えて?」
彼が真っ直ぐに見つめてくる。
「お願い」
「な…るせくんに、あげようと思ったの。」
「僕にくれるの?」
「……うん。あげる」
震える手で、彼に渡した。