極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する


「しかし、大地くんも大変だよね。姉のつぐみがこんな恋愛オンチだと気が気じゃないだろうし。そういえば、大地くん自身って恋愛方面どうなの? 今高校生でしょ? あの顔でボクシングなんてやって体鍛えてたらモテるでしょ」

「モテるとは思うんだけど、大地はそういう話あまりしないからなぁ。今はとりあえずボクシングが楽しそうだけど……でもそうだよね。思春期だし、彼女くらいいるのかなぁ」

「いるよ、きっと。だってあの顔だよ。絶対にいる」

食べ終わり口元を拭いていると、佳乃が帰り支度を始める。
ここで夕飯を済ませたあと、ゆっくりとくつろげるカフェでお茶するのが私たちのいつものパターンだった。

お会計を済ませて外に出ると、空はもう薄暗くなっていた。待ち合わせした十八時のときは太陽こそ見えないものの、まだまだ明るかったのに、今はもうほとんどが藍色に近い。

道路と歩道との間に植えられた木々が風に揺れ、カサカサと心地のいい音を立てていた。
夏のどんどん上がる気温は問題だけど、緑いっぱいの葉っぱはとても好きだ。うちの中庭が緑で溢れているせいもあるのかもしれないけれど、青々した自然はホッとする。

カフェに行く前に、佳乃が駅中に入っている雑貨店に用事があるということで付き合う。

駅前の広場は賑わっていた。小さな噴水があったり、花壇と一体型になったベンチがあったりしてくつろぎやすいのかもしれない。

駅舎から溢れる明かりが広場全体をあたたかく照らしていた。

まだ時間が遅くないからか、学生の姿も多いなぁ……とぼんやり眺めていて「あ」と声がもれる。噴水前に大地の姿を見つけたからだ。


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