極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する
「あれ。大地くんだよね?」
私の視線の先を追った佳乃が聞くからうなずく。
「うん。あと……誰だろう」
大地の隣には女子高生の姿があった。
茶色い髪をしたセミロングの女子高生は、大地の腕に触れて笑いかける。大地は無表情ながら、女子高生の手を振り払うわけではない。
弟のそういう場面は初めて見ただけに、内心少しそわそわしていると佳乃がはしゃいだ様子で私の腕をパチパチと叩く。
「あれって彼女? うわー、さっき話題に上がったばっかりじゃん。大地くん、空気読んでるねー!」
でも、楽しそうな顔で言ったあと、どこか不服そうに首を傾げる。
「だけど彼女のイメージ違うなぁ。大地くんってしっかりしてて真面目だから、彼女もそういうタイプ選ぶと思ってたのに……見た目、遊んでそうな子だよね」
佳乃の言う通り、一緒にいる女子高生は普通よりも派手目な子に見えた。
遠目からだから細かい部分まではわからないけど……雰囲気的に、大地が好みそうなタイプではない。
まぁでも、彼女にしても友達にしても、大地には年相応に楽しんでほしい。そんな風に思い眺めていたとき。
「……あ」
バチッと目が合い、声がもれた。大地も口を〝あ〟の字に開けていたから、同じように言ったのかもしれない。
わざとじゃないにしても覗き見みたいになってしまったし、怒られるかな?と思っていると、大地は女子高生になにか言い、こちらに走ってくる。
その後ろからは、「えー! なんで?!」と不満そうな声が飛んでいたけれど、大地は気にしない様子だった。
通行人を避けながら駆け寄ってきた大地は、私たちの前で足を止める。いつもの雰囲気だしどうやら怒ってはいないようだ。