極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する
「姉ちゃん、出かけてたんだ」
「うん。佳乃とご飯食べてきたところ」
「あ、佳乃さん。ひさしぶりっす」
佳乃は何度もうちに遊びに来たことがあるから、大地ともおばあちゃんとも面識がある。
大地が軽く頭を下げると、佳乃がニヤニヤとした笑みを浮かべた。
「大地くんひさしぶりー。っていうか見てたよ。あれって彼女?」
開口一番でそんなことを聞く佳乃に呆れつつも、そこは気になるところでもあったから黙っていると、大地は苦笑いを返した。
「違いますよ。ただ相談っていうか……それより、これからどっか行くの? もう帰るとこ?」
「これから雑貨屋寄ったあと、カフェ行くところ。あ、大地くんよかったらついてくれば? カフェにもそれなりにお腹満たせるメニューもあるだろうし、ご馳走してあげるよ」
佳乃の誘いに、大地は「マジで? 行く行く」と嬉しそうな声でうなずく。
「いや、さっきばあちゃんから電話きてさ、今日は広末さんちで夕飯食べることになったから自分の分は適当に買ってきてって言われたとこだったんだ」
「ああ、また広末さんと……仲いいね」
「同じドラマ見てるから、これから先どうなるかとか話してるらしいよ。あの、主人公の女がやたら股ゆるいやつ。少し前にネット記事にもなってたじゃん。放送時間が二十一時からなのにあの内容は道徳的にどうのって」
そのドラマを佳乃も見ているらしく、そこからは佳乃の見解を聞きながら雑貨屋さんを覗き、カフェに入る。
壁がレンガ調になっている店内を照らすのはオレンジ色の淡い照明。吹き抜けの天井には鉄筋の骨組みが見え、そこにペンダントライトが吊るされている。
通してもらった窓際のソファ席には、紫色とオレンジ色、そしてオリーブ色のクッションがひとつずつ置かれていて、ブラウン色のソファとの色合いが綺麗だ。私と佳乃が並びに座り、大地は向かいに座らせて注文を済ませる。