極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する
「遠慮なく食べなー」と、佳乃に気前よく言われた大地は、オムライスのサラダセットと特製ハンバーガーを頼んでいた。
そして私たちふたりぶんの飲み物を注文し終えたところで、佳乃が「しかしいい男に成長したねぇ」と、まるで親戚のおばさんみたいなことを言いだす。
落ち着いたBGMが流れる店内。お客さんの入りは六割ほどだった。
「学年で一番モテるでしょ」と聞く佳乃に、大地は首を傾げる。
「どうですかね。俺、あんまり恋愛方面興味ないんでよくわかんないですけど、授業で調理実習とかあると豊作ですね」
「調理実習とか懐かしいなぁ」
「でも、うちはばあちゃんも姉ちゃんも料理うまいから、もらったモンをあんまりうまいと思ったことないっすね。まぁ、口には出さないようにしてるけど」
水を飲みながら言う大地に、「賢明だね」とうなずいた佳乃が聞く。
「恋愛方面興味ないって言うけど、さっきの子は? あの子絶対大地くんのこと好きだし、さすがに大地くんも気付いてるでしょ?」
「まぁ、さすがに。あいつ、すげーわかりやすい態度とるし。たぶん、わざとだろうけど」
運ばれてきたオムライスに顔をほころばせながら大地が答える。
特製ハンバーガーと、私と佳乃のアイスティーも次々にテーブルに置かれていくから、店員さんが離れるのを待ってから口を開いた。
「へー。わざととか、今時の高校生の恋愛戦術すごいね。告白とかされてないの?」
「それはまだ。なんか言ってきたらきっぱり断れるからそっちのほうが楽なんだけど……なんか、面倒なこと言いだしてきて……あ、いただきます」
手を合わせたあと、大地がオムライスを食べ始める。部活で疲れているんだろう。パクパクと目を見張るスピードでオムライスが消費されていく。