極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する
「面倒なことって?」と聞いた佳乃に、大地がスプーンを運ぶ手はゆるめずに答える。
「ストーカーがどうのって。なんか、告白されて断ったらその男が毎日帰り道あとつけてくるとかで、諦めさせるために一緒に帰ってほしいって言われて」
「ええ……今の子はドライって聞くのにそんなことになってるの?」
驚いた佳乃に、大地が苦笑いを浮かべる。
「全員ドライってわけじゃないですよ。まぁでもその前に、ストーカーうんぬんが本当かどうかも正直疑ってるけど」
「そうなの?」
「俺の気ひきたいだけって可能性もあるし。ただ、もしストーカーが本当でなにかあった場合、後味悪いから付き合ってるけど。それだけ」
淡々と答えながらハンバーガーを頬張る大地に、佳乃と目を合わせ苦笑いを浮かべる。
ドライというのか大人というのか、大地の対応はあまりに殊勝に思えて感心してしまった。
私が高校生の頃は、常に目の前のことでいっぱいいっぱいで、後々面倒だなとかそういうことをここまで考えられなかった気がする。
「まぁ、大地くんはしっかりしてるから心配ないよね。問題はつぐみのほうだよ。ダメな男とばっかり付き合ってさー……ああ、じゃあ私が紹介してあげようか!」
アイスティーの入ったコップをテーブルに置いた佳乃が、パッとした笑顔で私を見る。