極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する
「……もしかしたら、ですけど。本当にもしかしたら私の祖母のことでしょうか」
まさかな、と思いながらも聞くと、男は「そう」と当たり前のように答えるから一気に血が頭にのぼる。
戦闘モードのスイッチがカチリと入った気がした。背筋を伸ばし、とおせんぼするみたいに立ち男を見据える。
「祖母に用件があるようでしたら代わりに伺いますけど」
睨むように見る私に、男はチッと舌打ちし「また気が強そうな女だな……」と面倒くさそうに独り言をもらしたあとで言う。
「まぁ、いいや。出直すし」
「わざわざ訪ねてきたならそれなりの話があるってことでしょ? 祖母は高齢で難しい話はわかりませんから、私が今伺います。ご用件は?」
語気を強めた私に、男は「だから……」となにかを言おうとしたみたいだったけれど、そのまま黙ってしまう。
この期に及んでまだ言わないとかハッキリしない男だな、と鼻息を荒くしていたとき、それまで面倒くさそうにしかめっ面をしていた男が、突然ニヤッと口の端を上げた。
「つーかさ、そんな格好で出てくるとか……なに、誘ってる? 欲求不満とか?」
「は? 普通の部屋着ですけど。これで誘われてると思うなら、自意識過剰ですよ」
Tシャツにショートパンツ姿は、今の日本において決して露出が多いわけではない。こんな格好の子なんてちょっと市街地に出向けばそこら中で見つけられる。
それでも……さすがに濡れ髪はまずかったかな、と内心思っていると、男が言う。